1CCC-Finalist set contents
この度は1st crack coffee challenge 2023 Finalist Setを購入いただきましてありがとうございます。ここでは、実際の予選競技でどのようなことを考え、焙煎計画を立てて、実際に提出してたのか感想をお伝えしようと思います。
クイズ形式の商品ですので、以下ネタバレを含みますので、ぜひ先にカップを楽しんでいただき、以下のコンテンツをお楽しみください。
①競技会サンプル豆焙煎
この競技は、お手本の焙煎豆に似せて焙煎することを主題としています。今回のお手本はCOFFEEMAN 江口さんによるものです。課題豆はTanzania Mwika Washed。カップ評価の第一印象としては、タンザニアらしい、リン酸を伴う明るい酸質が特徴的だと思いました。冷めてきても輪郭がはっきりとしており、ニュークロップらしい生き生きとしたフルーツの甘さを感じることができました。一方で、繊細さも伴っており、デリケートゆえのハーブらしいニュアンスも感じられ、タンニンを思わせる質感もあり、酸味、甘さ、質感が絶妙なバランスで調和のとれているカップであり、complexで追い込んた焙煎であることが理解できました。
デベロップによる甘さで誤魔化さずに、産地のテローワールを最大限に表現することを意識しつつも、テイストバランスが偏らないようにコントロールしている高難易度の焙煎を行なっていることが理解できました。
②サンプル焙煎1回目
「A」のサンプルになります。
1回目はいつもの桜梅桃李のスタイルで焙煎を行いました。私の焙煎スタイルは、どの様な豆でも同じ焼き方をしており、最終的な窯出しの温度で仕上がりを調整しています。投入量は930gで、初回の窯出し温度は「193.5℃」です。
「A」カップの印象は、狙ったポイントより若干浅い、フレーバーがぼんやりしている印象がありました。近いけど少し惜しいというところで、明るい酸質はあるものの、全体的に舌上にastringentを感じ、わずかにsharpな酸も含まれているため、少し未成熟なフルーツを思わせる印象でした。甘さは感じられるものの、ほんの少し輪郭が足りなく、お手本焙煎に比べるとややネガティブな印象をコメントしやすいカップでした。
③サンプル焙煎2回目
「B」のサンプルになります。
2回目は少しだけ焙煎を進めることを意識しました。ただ、その際にフレーバーを引き出すためにも、このバッチでは3g減らして927gにしました。「194℃」で窯出しし、焙煎度を進めました。
「B」のカップの印象は、輪郭のあるフレーバーと共に、甘さに包まれている心地よいカップとなりました。しっかりMedium Intensityの甘さを感じられ、ボティもMediem Weightに粘性も感じられます。バランスよく仕上がっている普段の桜梅桃李では販売しているようなカップとなりました。
良い部分はあるものの、冷めた時も含めて全体的と考えると、お手本に比べると、焙煎度が進んでボディー感が増した分、少しチョコレートの印象で風味がマスクされてしまっている印象がありました。無難ではあるのですが、お手本の様なフルーツのような酸の明るさは少し感じにくいと思いました。
④サンプル焙煎3回目
「C」のサンプルになります。
3回目は「A」「B」の間を狙おうと思いました。「ほんの、、、ごくわずか」の調整であるため、フレーバーの出方を考え投入量は変えず927gにしました。窯出しは明るい酸と見本のような焙煎度に近づけるため「193.5℃」に戻して窯出ししました。
「C」カップの印象は、より酸の輝きが美しくなり、Medium Intensityの甘さがしっかりとサポートされて、American CherryやStoneFruitsの甘さを感じさせました。
リン酸を感じられ、豊かなタンザニアのテロワールも感じることができます。質感も適度なDrynessが心地よくsparkringを感じさせるものがありました。温度帯が下がるごとに、カップが明るくなっていき、冷めていく中でも1杯を飲み切れるバランスに仕上がりました。お手本焙煎までではないものの、complexさも感じられ、タンザニアのコーヒーを十分に堪能できるカップが仕上がりました。
⑤まとめ
最終的に提出したカップは「C」です。実は特殊なアプローチをしているわけでもなく、いつも通りの桜梅桃李の焙煎スタイルでそのまま提出しました。バッチの調整も、普段通りで再現性が高く、とてもシンプルな手法です。
6月の焙煎にはなりますが、飲んでもらえたら、「いつもの桜梅桃李の味わい!」と思ってもらえると思います。
競技会や普段のプロダクトローストもそうですが、一番大事なのは「再現性」だと考えています。Giesen初めドラム式の半熱風焙煎機は常に、環境による影響を受けて微妙に変化していきます。その変化と向き合いながら、適切にアジャストしつつなので、見えない変数に気がつくために、どれだけ自分の焙煎機と長い時間を向き合っているかがすごく重要だと思っています。
今回はいつもの私の焙煎機が使えたので実力を発揮できたかもしれませんが、焙煎機が異なると良い結果は残せないと思いますし、さまざまなめぐりあわせの結果、運が良かったとも思います。
決勝はプレゼンテーションが中心となりますが、変わらずいつもの桜梅桃李で勝負していこうと思います!応援のほどよろしくお願いいたします!
小玉 真知