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カートが空です

焙煎人インタビュー 小玉真知

「最高にカラフルでやさしい世界に。」どんなに難しくても、私らしく焙煎したい。浅煎り焙煎を貫く焙煎人のこだわり。

 

オンライン販売のコーヒー豆の焙煎をひとりで支えているのが小玉さん。

アメリカのカルフォルニアで育ち、大学卒業まで食文化豊かなアメリカで育った。そんな彼女だからこそ引き出せる、彼女らしい色彩フレーバーの世界がある。

小玉さんに、焙煎の裏側や、仕事への熱意を伺いました。 コーヒー業界では、まだ数少ない若手の女性のロースターの内面に迫ります。

 

----以下、インタビュー内容---

 

ー「おいしい」が何よりも好き。自由なアメリカの食文化で育った味覚の感性が私のルーツ

小玉:小さいころから食べるのが大好きでした。思えば、アメリカでの食体験が私のすべての始まりです。ご存じかもしれませんが、アメリカンフードは本当に食豊かで自由で多色文化です。ギリシャ料理に始まり、南部料理、メキシカンなどなど盛りだくさんです。例えば、日本だとサラダ単体で食べることはありませんが、アメリカですと「主食」です。皆さん好きなようにいろんなものを盛り込んで食べます!食文化が多彩なゆえ、野菜や果物も様々ですし、アーティチョークも。日本だと高価なブラックベリーもすぐに手に入ります。年がら年中全部揃っている。食べ盛りの私にとってはまさに食の天国でした!笑

それから、私のファミリーの影響も大きいです。そもそも家庭環境が少し特殊で、母が韓国人だったこともあり、カルチャーなのか、美味しいものを食べに行ったり、家族でいっしょに食べることを楽しむ文化がありました。そんな環境で育ったので「食べる」のは大好きで、人一倍興味があり、学生時代からもっと「食」に学んでみたり模索してみたいと思い始めていました。そこで、勉強のためフードコーディネーター資格を取得したり、ワシントンDC時代には美食クラブに参加したりしてました。これは、アメリカにはRestaurant Weekというものがあります。ご存じですか?なんと、その週は学生でも高級レストランに割引で食べれるんですよ!そのときはクラブメンバーと歩けなくなるまで、話題の美味しいお店をはしごしていました笑。

ー「苦手」から「おいしい」に。1杯のコーヒーに感動が、焙煎のきっかけに。

小玉:実は、昔はコーヒーはそこまで好きでなかったです。深煎りだとすぐお腹痛くなったりしてたので笑。そんな私がコーヒーにはまるきっかけになったのは、大学時代の友達の家に滞在した際に出された1杯のコーヒー。久しぶり良いコーヒーを飲んでふと「あ、コーヒーも面白い。もっと知りたい」と思いはじめました。 それから帰国後は、時間を見つけてはいろんなコーヒーショップを巡りました。ちょうどスペシャルティが、流行り始めた時期というのもあり、苦くないフルーティなコーヒーは私を虜にさせました。毎朝コーヒーを飲むのが日課となり、美味しさを求めて家でもハンドドリップを始めました。その延長線で、興味本位で手編み焙煎をやってみたら、めっちゃ楽しく夢中になってしまいました。まさに私にとって運命の出会いでした笑。

ー私にぴったりの焙煎機の出会い。あえて難しい直火式サンプルロースターを導入。

それからもっと焙煎の勉強がしたいと強く思うようになり、セミナーに通って人から教わるよりも、自分が焙煎機に向き合う時間を少しでも長くしたいという思いで、思い切って小型の焙煎機を決意しました。候補の焙煎機はいくつかあったのですが、最終的に、営業の方が親身に対応してくださった富士珈機さんの焙煎機を購入しました。ディスカバリーと呼ばれる直火式タイプの方のサンプルロースターです。

あえて直火式を選んだのは、オブスキュラさん(当時)など好きなお店が使っており、操作性の直観性とそもそも味わいが私のイメージに近いと思ったからです。ドラムにパンチ穴が開いているので、直接火が豆にあたることで香ばしい香りがでやすいことと、火力のコントロールの追従性がよくて「ここだ!」というタイミングでダイレクトにカロリーを入れやすいのが特徴です。

ただ、このタイプでの浅煎りの焙煎は「めっちゃくちゃ難しい」です笑。再現性も難しくてとても苦労しました。どうやって焙煎技術を学んだかというと、独学で本を読んだり、Mill City Roasters/Cafe ImportのYouTubeも結構見ました。洋書だと焙煎関係のものもあるので読んでみたりしました。日本語の書物やコンテンツは、海外に比べると残念ながらあまり多くないですね。焙煎機導入後しばらくしてSCAJでの多くの出会いもあったこともあり、人から教わったり、ディスカッションしていく機会が増えていき、自然と自分が求める焙煎スタイルが完成していったと思います。 焙煎のスタイルは焙煎人によってさまざまな考え方とアプローチがあり、どれが正解というものではありません。なので、自分自身が信じるものを形にしていくクリエイティブな一面があり、それが私が焙煎が好きな理由の1つなのかもしれません。

ー友人の「おいしい」の一言がうれしく、好きな焙煎を仕事にしたいと思い開業を決意。

小玉:あるとき、飲み切れないコーヒー豆を友人にくばったら、「コーヒーって、ちゃんと味があるんだね。飲みやすくておいしい。」と言ってくれて、とても嬉しかったのが忘れられません。そうやって少しずつ少しずつ口コミが広がり、知り合いから「飲んでみたい」というお声かけがだんだん増えていきました。もっとたくさんのコーヒー豆を焼いてみたい。自分が美味しいと思ったものを共有したい。好きなことを仕事にしたい。という思いが強くなり、パートナー(高仲)の後押しもあり、コーヒーの通信販売店をオープンすることに決めました。

ー焙煎業界の常識を変えたい。気づいてほしい。焙煎機って実はかわいい。

小玉:オープンを機に、念願の業務用焙煎機のGiesenを導入しました。選んだ理由は性能面(後述)ももちろんですが、それ以上に「キュート」なのが決め手です笑。焙煎業界もいまだに、失礼ながら男性社会でメカメカしい焙煎機が多い中、Giesenはデザイン性も中性的でカラーリングを自由に選べるので、なんだか私にしっくりくるというか、女性らしく焙煎も自由になれる予感がしました。そこで、カラーリングも思い切って、パステルグリーンに(日本初!)、ついでに壁紙もお花で彩りました。私のかわいい仕事場が完成しました!

GiesenはWorld Coffee Roasting Chamionshipの公式スポンサーで、世界大会モデルとして、多くのトップロースターから支持されています。蓄熱性が高く、中までふっくら焼き上げ、窯が安定し再現性が高いのが特徴で、一方で、デジタル制御を積極的に取り入れた先進的なマシンでもあり、焙煎人が自由に操作できる範囲が広く、より精密な焙煎ができるのが、人気の理由です。私はどちらかというと「豆と相談しながら焙煎していくスタイル」なので、積極的にテストスプーンで、豆の状態を確認しながら進めていくので、私のスタイルにも合っていました。

ーやわらかくて繊細なフレーバーを引き出したい。コーヒーが苦手な人にこそ飲んでもらいたい。

小玉とくに 新しいグルメ体験が好きな人 、苦いコーヒーが好きでない人 、紅茶のような風味や香り豊かな体験が好きな人に飲んでもらいたいです。

私たちの求める味には明確なビジョンがあります。具体的には、フレーバー豊かで、酸味や質感、甘さがそれにバランスよく伴ったコーヒーを焙煎したいと思っています。もちろんコーヒー界の傾向・トレンドとしてクリーンさ(透明感)を重視していますが、それだけでなく、その豆に合った美味しさを引き出したいと思っています。当初から浅煎りにこだわっているつもりはなかったのですが、今の私たちの技術でできる得意分野で、最大限のフレーバーの楽しさを伝えたい模索した結果、浅煎り中心のラインナップになっています。

それだけでなく、「フレッシュでおいしいものを早くお客様へお届けしたい」という思いで、少量多品種にし、コーヒー豆の品質にも一番気を配っています。とくにフルーツ系のフレーバーは鮮度のよいもの選ぶ必要があり、毎週様々な商社さんからサンプルを取り寄せて評価しています。小さいお店なので、そのスピード感を大事にして、毎週のように新豆をリリースしていきたいと考えています。

ー焙煎人の数だけ可能性があると思う。だから私らしくありたい。

小玉:自分が飲んで美味しいと思える焙煎ができた時が一番の喜びです。 たとえ同じ農園の豆でも、その年その年で変わります。そのフレーバーを焙煎で探り出すことは可能性が無限に広がります。焙煎は人それぞれ違うし、全く同じにはならないので、ある意味表現の一つだと思います。中煎り、深煎り然り、世の中に素晴らしいコーヒー屋さんがたくさんあります。追い求めるのではなく、心から尊敬しています。だからこそ、私たちは浅煎りのコーヒーで勝負します。私たちだからこそできるフレーバーや質感、エレガントさなどの世界観を直感で楽しんでもらえたら嬉しいです。

今は受注焙煎というスタイルで、ご注文いただいてから焙煎してフレッシュな状態で発送しています。供給量が多くないからこそ、ひとりひとりのお客様を思い浮かべながら丁寧に焙煎しています。実質2人でお店をやりくりしているので、私たちのペースで少しずつ進めていますが、実店舗がないからこそ、1人1人とのコミュニケーションを大事にしたいと考えています。どのご注文も、ストックを販売しているのではなく、すべてがハンドメイドで、注文いただいてから準備をしています。深夜2時過ぎまで梱包していることもあります笑。

ーチームとしての焙煎は、私に大きな成長を与えてくれました。Roast Mmasters Team Challenge 2019から学んだこと

小玉:2019年は積極的に学びの時間を作りました。5月はQアラビカグレーダーの合宿、6月はリトリート(焙煎合宿)、そしてローストマスターズチームチャレンジに参加しました。とくにチームチャレンジは学びが多かったです。焙煎はどうしても独り作業になりがちです。でも他の方と焙煎を共有することで、未知の発見や他人への考え方を見ることができます。関東Aチームは本当に良いメンバーに恵まれ、議論しながら味を決めていき、どのようなアプローチをするか、独りですることを一緒に行えたし、なによりも、形に残せたのが達成感がありました。今は皆さん離れ離れですが、変わらず仲良しです。

ーコーヒーは一杯のパッケージから。新しい発見を楽しんでほしい。

小玉:おかげ様で多くの方から「かわいい!」って好評いただいております笑。一番人気の桜梅桃李プレミアムセレクションは、「気軽に高品質なスペシャルティコーヒーを楽しんでほしい」という思いでスタートしました。コーヒー1杯分が6種類楽しめます。

もともとのルーツは友人のお土産豆で、コーヒー好きが集まるときに、お土産で一杯分のコーヒー豆だけ持参してくることがよくあります。まさにコーヒーパーティですね。そうやって気軽に、「1杯のパッケージを気軽に持ち歩けたらいいな」っていうのがスタートのきっかけでした。

もう一つは「新しい発見」のきっかけをできるだけ増やしたいという思いです。コーヒーを好きになればなるほど、選択肢が狭くなってしまいがちです。「こういう面白いコーヒーがあるんだ!」っていう感動の実体験が少しでも上がってくれたら嬉しいです。

最近は1杯分でも販売をスタートしています。これは、高価なコーヒー豆をお求めやすくしたい狙いです。当たり前ですが、よいものほど価格が高いものです。20gスタイルが、購入ハードルをどうやって下げていくかという課題の解決のアプローチになれたらと考えています。

ほかにも季節限定やいろいろな組み合わせの詰め合わせ、その他のラインアップを提供していき、「新しい発見のチャンス」を皆様にもお届けしていきます。もちろん美味しい豆は大前提で笑。「コーヒーが楽しい!」を提供できる身近なブランドにしていきたいと思っています。コーヒーセレクトショップなどでも扱って欲しいですし、小さなデザイナーズホテルみたいな普段の生活の中で美味しいコーヒーが飲めるような体験を作っていきたいです。

ー応援してくれるお客様へ一言。

小玉:いつもご注文いただきありがとうございます!東京都墨田区の小さなロースタリーですが、お客様にとって身近な存在であればよいなと思っております。今後も、動画配信やSNSを盛り上げていきたいと思いますので、応援のほどよろしくお願いいたします。

最後までお読みいただきありがとうございました!

 

小玉真知 プロフィール

アメリカのロサンゼルスで育つ。ワシントンDCでの大学卒業後、帰国。アパレル業界やコンサルタント、英語講師などの仕事の傍ら、コーヒーの焙煎に興味を持ち、サンプルロースターを使った自家焙煎をスタート。2019年からは原宿のカフェでバリスタスキルを学ぶ。また、本格的にコーヒーの味覚技術を学ぶべく、国際資格であるQアラビカグレーダーを取得。そして、焙煎合宿のリトリートやRMTC2019に参加し、焙煎技術を磨く。10月には個人プロジェクト「Lily& Coffee 」をスタートし、山形のイベントに出店。2020年には世界大会公式焙煎機Giesenを導入。持ち前の明るさと探究心をもとに、スペシャルティコーヒーの新世代を追い求めて焙煎技術鍛錬を続けている。